債務整理は退職金の受け取りに影響する? タイミングで変わる取り扱いについて
債務整理を行うことで、債務者の財産が処分されてしまうなど一定の影響を受けることがあります。では退職金の場合はどうなるのでしょうか。
その影響については債務整理の具体的な手続き内容や、退職金を受け取るタイミングなどによって変わってきます。当記事では任意整理・個人再生・自己破産を行う場合を想定して、それぞれ退職金をどのように取り扱うことになるのかを解説します。
任意整理の場合
任意整理では、債務者が債権者と裁判所を介さず私的に交渉を行うことになります。後述の個人再生であれば民事再生法、自己破産であれば破産法に則って運用されていますが、任意整理に関しては手続きの進め方について法律で厳格に定められていません。
つまり、結論としては退職金の取り扱いについても「債権者との交渉次第」ということができます。基本的には、任意整理を行っても退職金への直接的な影響はありません。
《 受け取るタイミングによる退職金への影響 》
- すでに受け取っている場合
・・・退職金を返済に充てるかどうかを債務者自身が選択する。 - 近々受け取る予定の場合
・・・退職金を返済に充てるかどうかを債務者自身が選択する。 - 退職の予定がない場合
・・・影響はない。
考えられる間接的な影響
退職金の存在と任意整理は直接的には影響しませんが、債務者側としては「交渉材料としての活用」ができるかもしれません。
すでに受け取っているのであれば、それが退職金であるか否かを問わず返済原資として使うことになるでしょう。そして現時点で受け取っていなかったとしても、近々退職金が支払われる可能性が十分にあるとき、「もうすぐまとまったお金が入るはずだから」「受給した退職金を使って一括返済する」と一定期間返済を猶予してもらうための交渉に使うことができます。
逆に、債権者側が退職金の存在を交渉に持ち掛けてくる可能性も考えられます。債務者の自由な判断で処分できる金銭であり退職金を強制的に返済に充てられることはないものの、退職金の受給予定が明らかなら、返済への充当を強く求められることはあるかもしれません。
自己破産の場合
自己破産の場合、自由財産(破産後も自由に管理処分できる財産)を除き、破産者の財産はすべて清算されます。その過程で、破産者の財産は破産法上「破産財団※」に組み入れられることが法定されており、退職金をすでに受け取っているときもその金銭は破産財団へと計上されてしまいます。退職金として受け取ったことを理由に特別扱いすることはできません。
※破産財団:破産者の財産であって、破産手続きにおいて破産管財人にその管理・処分の権限が専属するもの。
破産手続きに着手する段階でまだ振り込まれていなくても、近々確実に振り込まれることがわかっているのであれば原則として破産財団に含まれます。自己破産について規律した破産法にて、次のように破産財団の範囲が定められているためです。
(破産財団の範囲)
第三十四条 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
また、現時点で退職の予定がなくても退職金について考慮する必要があります。以上を整理すると次のようにまとめられます。
《 受け取るタイミングによる退職金への影響 》
- すでに受け取っている場合
・・・現金もしくは預貯金として破産財団へ計上される。 - 近々受け取る予定の場合
・・・原則として破産財団へ計上される。 - 退職の予定がない場合
・・・将来退職金を受け取る見込みがあれば、その時点における退職金見込額の8分の1に相当する金額が破産財団に計上される。
これから振り込まれる退職金
前項で紹介した破産法の条文に続く第3項では、いくつか破産財団に属さない財産も定義されており、その1つに“差し押さえることができない財産”も掲げられています。ここには日常生活に必要な衣服や寝具、そして生きるために最低限必要な現金も含まれていますので、ほかに現金預金がほぼ残っていないのであれば退職金を残すこともできるでしょう。
※確定拠出型年金も原則として差し押さえの対象にならず、自由財産として扱われる。ただし税金を滞納しているときは例外的に差し押さえられる可能性がある。
さらに、民事執行法では差押禁止債権の1つに退職手当等を掲げており、次のように規定を置いています。
退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
債権を差し押さえることは法的に認められますが、これから振り込まれる退職金や給与などは生きるために必要なものであり贅沢品などとは性質が異なります。そこで法律上、1/4までしか差し押さえてはいけないと規定してあるのです。
個人再生の場合
民事再生法に基づく個人向けの債務整理手続きが「個人再生」です。個人再生が上手くいくと返済総額を大幅に圧縮できるのですが、その圧縮の程度はいくつかの基準をもとにして算定されます。
考慮される要素は、①債務総額、②清算価値※1、③(2年分の)可処分所得※2です。③については特例措置である給与所得者等再生の手続きの際に採用される基準であり、一般的には①と②を比較する必要があります。
※1 清算価値:破産により所有財産を売却した場合に得られる価値のこと。「債務者が所有する財産の総額」に近い金額となる。
※2 可処分所得:債務者の収入から、税金や最低限の生活費等を控除した金額のこと。
退職金の存在はこのうちの②に影響するケースがあります。そして清算価値は破産した場合を想定した金額ですので、上述した自己破産をした場合の取り扱いに共通する点があります。
すでに退職金を取得しているのならその金額はその他一般的な財産同様に清算価値に計上されると考えられますが、まだ受け取っていない場合には自己破産同様、個別の状況に応じて判断する必要があります。たとえば退職の予定が一切ないタイミングでも将来退職金を受け取る見込みがあれば、その時点における退職金見込額の8分の1に相当する金額が清算価値に計上されます。近いうち受け取るというタイミングでも、退職金見込額の4分の1が清算価値に計上されます。
《 受け取るタイミングによる退職金への影響 》
- すでに受け取っている場合
・・・現金もしくは預貯金として全額が清算価値として計上される。 - 近々受け取る予定の場合
・・・退職金見込額の4分の1に相当する金額が清算価値に計上される。 - 退職の予定がない場合
・・・将来退職金を受け取る見込みがあれば、その時点における退職金見込額の8分の1に相当する金額が清算価値に計上される。
なお、「すでに退職金を受け取っている」「退職金が近々確実に振り込まれる」という状況でも、ほかの現金預金がほとんど残っておらず生活のために退職金が欠かせない状況にあるのなら自由財産として確保できる場合があります。
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司法研修所入所
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Lawyer Minakoshi Ishin
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Lawyer Miura Yuu
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相手方のいる法的紛争は先が予想しにくく、心情的にも不安や負担が大きくなりがちです。
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中央大学法科大学院修了
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Lawyer Sakamoto Ryosuke
弁護士坂本 亮介
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Lawyer Yasuda Takashi
弁護士保多 崇志
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