詐欺被害で負った借金に返済義務はある?契約の取り消しや損害賠償請求について
詐欺被害に遭い借金を負ってしまった場合、その借金の返済義務はどうなるのか。これは状況によって異なり、どのような経緯で、誰との契約により借入を行ったのかが重要になってきます。法的にはどう評価され、被害者としてはどうすればいいのかをここで解説していきます。
原則として返済義務は消えない
詐欺に巻き込まれて借金を抱えたとしても、お金を貸した相手が詐欺行為に関与していないのであれば、原則として借金の返済義務は消えません。
投資詐欺や結婚詐欺などの被害に遭い、加害者に渡すためのお金を銀行や消費者金融から借り入れたというケースを考えてみましょう。この場合、金融機関との間には適正な手続きによって貸付契約が成立しています。貸主である金融機関側は詐欺の事実を知らず、正当な手続きを経て融資を実行したにすぎません。
そのため、借主が「詐欺に遭ったから返済しない」と主張しても、法律上はその主張が認められないのが通常です。
借金の契約そのものが詐欺の対象であった場合
上記の例とは異なり、借入の契約自体が詐欺によって結ばれたと認められる場合だと、その契約を取り消せる可能性が出てきます。
民法でも、詐欺や強迫による意思表示は取り消せると明記されています。
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
さらに、契約の取り消しが認められたときは次の規定に従い、その契約ははじめから無効であったとみなされます。
(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
ただし契約が無効だとしても返済が不要になるわけではありません。契約の当事者双方は原状回復義務を負いますので、借主は借りたお金を返還する義務を負い、貸主も利息や手数料などを返還する義務を負います。
元どおりの状態に戻すため、受け取った分は返さなくてはなりません。
ただし、詐欺による取り消しを成立させるには前提として次の要件は満たさなくてはなりません。
まず、加害者が故意に詐欺行為を行ったことが必要です。相手を騙す意図をもって虚偽の情報を伝えたり、真実を隠したりする行為が該当します。単なる勘違いや言い間違いは詐欺ではありません。
次に、その詐欺行為によって被害者が錯誤(勘違い)に陥ったこと、そしてその錯誤に基づいて契約の意思表示を行ったことが求められます。つまり、騙されていなければ契約しなかったという因果関係が必要です。
契約の相手方の認識が重要
契約を取り消すには、民法第96条第2項および第3項に則り、「契約の相手方が詐欺の事実を知っていた、あるいは知ることができた」という要件も満たさなくてはなりません。
第三者による詐欺に関して金融機関などの相手方がその事実を知っていた、あるいは気付かないことが過失といえるほどの状況であれば、契約を取り消して被害者を救済するのも妥当と考えられます。
一方、金融機関側が本当に詐欺の事実を知らず、知りようもなかったのであれば、契約の取り消しを認めるのは酷です。
したがって、金融機関が詐欺に加担していたり詐欺の事実を認識していたりした場合を除き、借金の契約自体を取り消すことはかなりハードルが高いといえるでしょう。
闇金業者など違法な貸金業者だった場合
違法な貸金業者と契約をしてしまっていた場合であれば、返済義務が生じません。
利息制限法で定められた上限金利を超える違法な高金利で行われた貸付などは、公序良俗に反し無効と評価されるためです。
借用書や契約書が存在していても、その契約自体が違法であるため、法的拘束力を持ちません。それでも闇金業者から執拗な取り立てや嫌がらせを受けるときは、警察や弁護士に相談・依頼を通じて対応しましょう。
詐欺の加害者からお金を取り戻すことはできるか
仮に詐欺を理由に契約を取り消すことができた場合でも、受け取った金銭は返還する必要があります。取り消しにより契約ははじめから無効だったことになりますので、それまでに受け取っていた金銭や物についても元通りにしなくてはなりません。
そこで、金銭的な損失が生じてしまったときは、詐欺の被害者に対する損害賠償請求を行うことになるでしょう。詐欺は故意による違法行為であるため、不法行為に基づく損害賠償請求権が法的に得られます。
また、詐欺によって金銭を交付した契約を取り消したり無効としたりできる場合には、不当利得の返還請求権も生じます。これは法律上の原因なく利益を得た者に対しその利益を返還させる権利をいい、これらの法的な救済手段を駆使して金銭的な救済を求めることになります。
ただ、現実には加害者からお金を取り戻すことは容易ではありません。
詐欺を行う者は、身元を偽っていたり、連絡先を頻繁に変えたりするため、相手の特定がなかなか進みません。警察が加害者を逮捕できたとしても、加害者に資力がなければ支払いをすることができず、被害額の全額を取り戻すことは難しいでしょう。
被害回復を目指すなら、できるだけ早めに弁護士へご相談ください。弁護士が、損害賠償請求や契約解除の手続き、加害者の特定、示談交渉など被害回復に向けた具体的な方針についてアドバイスを行います。時間の経過とともに相手の特定も難しくなってしまいますので、被害に気づいた時点でご連絡いただければと思います。
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詐欺被害救済といえば「大地総合法律事務所」と認知していただけるよう、所員一同、プロフェッショナル集団として、常に研鑽を積んで参ります。
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新潟県立新潟高等学校卒業
中央大学法学部政治学科卒業
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Lawyer Miura Yuu
弁護士三浦 悠
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中央大学法科大学院修了
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第一東京弁護士会(登録番号63558)
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都内大手法律事務所勤務を経て、大地総合法律事務所入所
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